小説「おっぱい守事件」 第六章 - 洗濯屋のケンちゃんの風俗コラム |口コミ風俗情報局

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洗濯屋のケンちゃん(15)
風俗コラム『小説「おっぱい守事件」 第六章』
タイトル小説「おっぱい守事件」 第六章
投稿者洗濯屋のケンちゃん
投稿日2022年01月24日
『小説「おっぱい守事件」 第六章』
さて、いよいよ解決編です。

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ここから瀬奈のおっぱり守を盗んだ犯人が明らかに!

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まあ、そんなにもったいぶるほどの話でもないので、始めましょ(^_^;

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第六章(解決編)



「それで、犯人はだれなの?」
私はコーヒーカップを弄びながら聞いた。
「常連のお客さんです。最初は違う名前で予約してたので"すーさん"って呼んでたんですけど、この前の時から高木という名前で来てくれてます。こっちが本名らしいです」
「常連さんかぁ」
私は溜め息をついた。それは対応が難しいな。瀬奈が悩むのが分かる。
「それでどうするの?」
すると瀬奈は眉を寄せて頬杖をついた。
「そこが悩むところなんですよね~」

「それでどうして、その高木さんが犯人だと思うの?」
そう聞くと瀬奈は唇を歪めて片頬だけで笑った。
「どうしても何もないですよ。おっぱい守は今日、3枠目のお客さんに、わたしの27歳の誕生日プレゼントとしてもらったものですから」
「あ、じゃあ例の高木さんは」
瀬奈が頷いた。
「そうです。その後の4枠目、ラストのお客さんです」
なるほど。
「でも、枠の間のインターバルに部屋を出たりしなかったの?」
「いえ、部屋からは出ていません。あ、でもインターバルでちょっとうたた寝してしまったので、例えば忍者の美香さんが足音を立てずに部屋に入ってきても気づかなかったと思いますけど」
私、いきなり容疑者になった?
「いやいや私は例の無口なお客さんが2枠連続で入ってたから、あなたの部屋に行くヒマなんてなかったよ」
すると瀬奈は悪戯っぽく笑った。同性ながらこの子のこの顔は可愛いと思う。こんな顔で責められたら、コロッと参ってしまう男がたくさんいそうだ。
「美香さんを疑ってなんていませんよぉ」
「ほんとに?」
「ほんとですよぉ。第一わたし、高木さんの接客中におっぱい守があるのを確認してますから」
「どういうこと?」
「わたし、おっぱい守をバッグにこんな風に着けていたんです」
と言って瀬奈は私にバッグを見せた。バッグにお客さんにもらった御守りやキーホルダーをいくつか着けていることは前から知っている。なぜか「安産祈願」の御守りまで着けているが、とりあえず今はそこに気を取られている場合ではなさそうだ。
「ここに着けてたんです」
瀬奈はバッグのループを指差した。
「それでわたし、インターバルでうたた寝しちゃったせいでお迎えが10分ほど遅れてしまって、それで慌ててお迎えに行ったから、バッグがテーブルの上に置きっぱなしだったんです」
私は頷いて話の先を促す。
「それで高木さんと部屋に入ってきてから、バッグが置きっぱなしなのに気づいて、それで高木さんに断っていつものドレッサーの下にバッグを置いたんです。その時におっぱい守がまだ着いているのを見ました。高木さんにも見られたと思います。それから」
そう言って瀬奈はしばらく沈黙した。
「最後のベッドで、詳しい経緯は省略しますけど、わたしがドレッサーの下に頭を突っ込むような態勢でバックでしてたんですけど、その時、ドレッサーの下に置いてあったバッグが目の前にありました。その時、おっぱい守はちゃんとバッグに着いてました」
「なんか変わった場所でしてたんだね」
私が言うと瀬奈は苦笑のような表情を浮かべた。
「そうなんですよ。それになんかやけに激しくて、ちょっと痛いくらいだったんですよね。で、早く終わらないかな、なんて思いながらおっぱい守を見てました」
「なるほど。それで仕事が終わって部屋を出ようとした時になくなってることに気づいたと」
瀬奈が頷いた。
「そういうことです。だからおっぱり守を盗んだのは高木さん以外にあり得ないです」
私も頷いた。
「そうだね。ということは盗まれたのはその後?」
瀬奈が頷く。
「そうですね。やっと終わった後、わたしが1人で風呂場に行って自分の後始末とか高木さんの身体を洗う準備とかしてましたから、その時に盗まれたんだと思います」
「なるほどねぇ。でも、どうしてそんなことをしたんだろうねぇ」
私がそう言うと瀬奈が頬に手を当てて眉を寄せた。
「そうなんですよねぇ。ラスト枠ですから、自分がやったってすぐバレちゃうって考えなかったんですかね?」
「まあ、深く考えずにとっさに取っちゃった、ってことなのかな」
うん…と瀬奈は呟いて考え込んだ。
瀬奈はしばらく視線をあちこちに彷徨わせながら考え込んでいたようだったが、ぼそっと、そう言えば、と話し始めた。
「なんか今日の高木さん、ちょっと変だったんです。最初から妙に激しかったし。くぐりイスもしてみたんですけど、そこでもその次のマットでも、激しいのにイカなくて」
それで?と目で先を促す。
「それでわたし、何度もイッたふりしたんですけど、それでも高木さんイカなくて。あっ」
瀬奈が何か思い出したようだ。
「ずっと前に美香さん、"あの時"に名前を呼んであげるとお客さんが喜ぶよ、って教えてくれたじゃないですか。それでわたし、それをやってるのは前に言いましたよね?」
「うん、聞いたよ」
話がどこに向かうのかよく分からない。
「でもわたし、人の名前を覚えるのが苦手で。それに美香さんはどうか分かりませんけど、わたしは"あの時"にちょっと入り込んじゃうことがあるので、それで最初の頃、間違えて呼んじゃったことが何回かあって」
私は吹き出した。
「それはまずいよね」
瀬奈も苦笑いしている。
「まずいですよ。普通につき合ってたりする仲でそれやったら、即別れ話になりかねないですよ」
「確かに」
「それでわたし、お客さんにあだ名をつけて、あだ名で呼ぶことにしてるんです。例えば今日の最初のお客さんは2回目のお客さんだったんですけど、初会の時に下の名前を聞いていて、それが『卓(すぐる)』だったので"すーさん"、2枠目は初めてのお客さんだったんですけど、予約が鈴木だったので、やっぱり"すーさん"て感じで」
私は我慢できずにツッコミを入れた。
「何それ、二股かけている男に同じあだ名をつけて呼び間違えないように予防線を張ってる性悪女みたいじゃん」
彼女は頬を膨らませた。
「業務上の努力と言ってくださいよ。あだ名なら何パターンかにまとめることができますし、それに人から聞いた名前より自分で付けたあだ名の方が覚えやすいんですよ」
分かった分かった、と私は笑った。
「それに名前が"夕樹"で"夕"の字はカタカナの"タ"と似てるからたっくん、なんてこじつけ感ありありのあだ名の付け方もしてませんよ~」
分かったから話を続けて、と私が言うと、瀬奈が頬を膨らませながらも話を続けた。
「それで例の高木さんも最初の頃は"鈴木"で予約してたので、"すーさん"って呼んでたんです。それが確か前回から高木で予約するようになって」
「鈴木っていかにも偽名でよく使われそうな名字だよね。それで?」
「でももう常連さんでずっと"すーさん"って呼んでいたのに、いきなり高木さんってもピンと来ないんですよ」
「そうかもね~」
私はふと会社勤めをしていた頃の上司を思い出した。
「私が会社勤めをしていた頃の課長も人の名前を覚えるのが苦手でね。それで夫婦別姓の熱心な賛成派だったわ。ただでさえ人の名前を覚えるのが苦手なのに、女子社員は途中で名字が変わるのは卑怯だ!って」
「卑怯って何ですか」
と瀬奈は笑った。
「でもその課長さんの気持ち、分かります。ほんとに途中で名前を変えるのは勘弁して欲しいですよ」
「あはは、そうなんだね。その課長も結婚して10年も経つ女子社員を唐突に旧姓で呼んでしまったりして、けっこうおろおろしてたわ」
「課長さん、気の毒です」
話が横道に逸れてしまったので、私はそれで?と続きを促した。
「そう、それでわたし、前回はそのまま"すーさん"で通したんです。無理に高木さんって呼ぼうとしても、とっさの時に間違って高橋さん、とか呼んでしまいそうだし」
「それで高木さんは不満を言わなかったの?」
「前回は何も言わなかったんです。今日も途中までは特に何も。それが最後のベッドというかドレッサーの下に押し込められながらしていた時に、僕は高木だ、ってちょっと苛ついたような感じで言い出して」
ようやく話が戻ってきたような気がする。
「それで高木さん、って連呼してあげて、それでようやくイッてくれたんです」
そういうことか。長い回り道をした話がようやく戻った。
要するに、高木と呼んで欲しかった彼が、呼んでくれなかった瀬奈に不満を持ったから?
「うーん、でもそれでバッグから御守りを取ろうとするかなぁ」
私がそう言うと瀬奈は唇をへの字にした。
「うーん、そうですよねぇ。でも無関係ではないような気がしますけど…」

しばらく考え込んでいた瀬奈が、そう言えば、と再び話し出した。
「最初にバッグを片付けた後で、つまりバッグに着けた御守りなんかを見られた後で、高木さんの雰囲気が変わった気がするんですよね。何というか、ちょっと高圧的?支配的?になったような」
「ふーん、具体的には?って聞いてみたい気もするけど、なんとなく分かるからそれ以上は聞かないけど」
「まあ、美香さんが想像してることで間違いないと思います。ベッドで妙に激しかったのも同じ流れだった気がするし。あ、ベッドじゃなくてドレッサーの下だけど」
コーヒーを飲み干して話し続ける。
「それに、バッグを見られたすぐ後で、今日は俺が何人目の客?って聞かれたんですよ。まあそんなことを聞いてくるお客さんもいますけど、高木さんはこれまでそんなことはなかったので、あれっ?って思ったんですよね」
「なるほど、それからずっと、いつもの高木さんじゃなかったのね?」
私がそう聞くと、彼女は記憶をひとつずつ確認するように何度も頷いた。
「はい。そう思います。思い返すと、確かにバッグを見られてから高木さんの雰囲気が変わった、って思います」
私はウエイターにコーヒーのお代わりを頼んだ。ウエイターがテーブルを去ってから彼女に向き直った。
「つまりね、こういうことだと思うの。高木さんは常連さんってことだけど、何回目くらい?」
「6回目か7回目くらいだと思います」
「そっか。つまりね、高木さんはちょっとあなたに入れ込んでしまってるのよ。そういう時期なのかもね。何度も通ってから本名をあなたに教えて、本名を呼んでもらいたがったのもそうだと思う」
瀬奈が頷いた。
「そういう時期にあなたのバッグを偶然見て、他の仲良しのお客さんの存在を感じたのね、きっと」
「はい」
「まあ、ソープだから当たり前のことなんだけど、頭では分かっていても実際にその気配を感じてしまうと少し冷静さを失ってしまったのかもね」
「なるほど。分かる気がします」
「名前を呼ばせることに今さら拘ったのもそれが関係してると思うよ。それでも気持ちの整理ができずに、軽い嫌がらせというか、他の仲良しさんの気配を感じるものを消したくて、おっぱい守を盗んだ、ってことじゃないかな」
「どうしておっぱい守だったんですか?」
「まあ、そこはとっさに、しかもいつ見つかるかも分からないから余裕もないだろうし、単なる偶然だと思うけどね」
「そうかぁ、そうですね。そう言われるとそんな気がします」
瀬奈が力が抜けたような表情で天を仰いだ。
「で、どうする?」
「高木さんを、ですか?」
「うん、今、どんな風に感じてる?」
瀬奈はテーブルに肘をつき、両手で頬杖をついた。
「うーん、まあ正直なところ、ちょっとがっかりしてます。ちっちゃい男だな、って」
私は同じように両手で頬杖をついて瀬奈に顔を近づけた。
「そうだねちっちゃいね。でもね、男ってそんなもんだよ」
瀬奈が頬杖をついたまま、目だけで私も見た。
「私たちソープ嬢は仲のいいお客さんはたくさんいるでしょ?そうならないと稼げないしね」
瀬奈が目だけで頷いた。
「でも、たくさんの女の子からあなたを選んで来てくれる常連のお客さんにとっては、あなたは特別な女の子なんだよ」
すると瀬奈が口を尖らせて言った。
「だからたまにお客さんが嫉妬してトチ狂っても許してやれ、ってことですか?」
「ううん、どうするかはあなた次第、だよ」
私がそう言うと、瀬奈は頬を両手の中に埋めた。頬がひしゃげて面白い顔になってる。
「うーん、おっぱい守をくれたお客さんも、わたしにとっては大事なお客さんなんですよ?」
「分かってるわよ。あなた変な顔になってるよ」
私が笑いながら指摘すると、瀬奈は頬杖をやめた。じっとコーヒーカップを見つめている。
「うん、決めました」
私が2杯目のコーヒーを飲み終える頃、唐突に瀬奈が言った。
「高木さんには今回のことは不問にします。正直、次に来た時も今回と同じ感じだったら憂鬱ですけど、また元の高木さんに戻ってくれてるかもしれないし」
「もう来ないかもしれないけどね」
私が茶々を入れたが瀬奈は笑わなかった。
「それならそれで良いです。その方がホッとするし。でももしまた来てくれたら、これまでと変わらない接客をします」
「うん、それでおっぱい守の件は何も言わないの?」
「言いません。何もなかったことにします。それでおっぱい守はわたしが自分で買い直します」
「北海道の神社でしょ?」
「通販で買えるらしいです。中嶋さんがそう言ってました」
中嶋さん。私は笑ってしまった。
「中嶋さん、知ってたの?さすが神社仏閣マニアだねえ」
瀬奈も笑った。
「乳神神社って知ってる?って聞いたら、おっぱい守でしょ、って即答でしたよ。北海道の浦幌町にある神社で、通信販売もしてるんですって」
「そうなんだ」
瀬奈は頷いて続けた。
「それで買い直したおっぱい守を桜井さんにもらったものだと思うことにします」
そうだねそれが一番いいかもね、と私も思う。
「その桜井さんがおっぱい守をくれた人?」
そう聞いたら瀬奈はそうです、と答えた。
「桜井さんはもう1年くらい、月に一度くらい来てくれるお客さんなんで、さすがに覚えちゃいました」
そう笑って続けた。
「でも最初の頃は何回か桜田さん、とか間違って呼んじゃったんですよね。それでもツッコまれましたけど笑うだけで特に気にする様子でもなかったし、そもそも名前を呼ばれても特に燃えるってわけでもないよ、って言ってくれたので、桜井さんには名前を呼ぶのをやめちゃいました」
やっぱり間違えたんだ。
「分かった。瀬奈がそう決めたのなら、そうしたら良いと思うよ。でもひとつだけ言っておく」
瀬奈が少し不安そうな顔をして、何ですか?と聞いた。
「御守りはね、『買う』んじゃなくて、『授けてもらう』って言うんだよ」


「おっぱい守事件」 完
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